絵本とフリーミアムの古くておいしい関係

無料なのは、絵本の「中身」だけ

絵本とフリーミアムの相性 - キングコング 西野 公式ブログ

ネット上での「無料公開」で話題になっている『えんとつ町のプペル』。上の記事でも言及されているように、Twitter上では、〈絵本を無料で提供することは、自分の作品を有料で販売しているクリエイターから客を奪い、市場が崩壊する〉という趣旨の指摘が出て、それに賛同する声も集まった。

だが、西野亮廣氏自身が述べているように、製本された「絵本」そのものを無料で配っているわけではなく、中身のデータを公開しているだけであり、それは、本屋で立ち読みできるようにするのとなんら変わらない。

僕が「お金はもう要らないよ」と言ったのは、紙の絵本という物質ではなくて、データの部分。
事情があって買えない人でも『えんとつ町のプペル』が読めるように"Web上のみ"無料したわけです。
 
つまり、本屋さんの立ち読みをWeb上でできるようにしたわけです。
 
その上で、
「お金を出して買いたい人は、本屋さんで本を買って、無料で読みたい人はWeb上で無料で読んでね」
と、「お金を払う・払わない」の選択権をお客さんに委ねたわけです。
「絵本とフリーミアムの相性」(「魔法のダイアリー」2017/2/1 13:06アクセス)

そして彼は、自身のこのような手法を「フリーミアム」というビジネスモデルだと説明している。

フリーミアムとは何か

フリーミアム(Freemium)」とは、フリー(無料)とプレミアム(有料)をかけ合わせた造語である。

言葉の成り立ちからも分かる通り、コアとなるプロダクトを無償で提供しつつ、有料のハイグレード版を売っていくという、二本立てのビジネスモデルだ。ここで注意しなければならないのは、〈基本有償だがフリートライアルを設けているサービス〉や、〈一部分だけ試し読みできるが、全部読むには課金が必要なWebマンガ〉なんかは、フリーミアムには含まれないという点だ。(参考ページ:What is freemium ?

あくまで無料提供部分だけでも十分に価値あるプロダクトとして成立しており、有料部分はさらなる高機能や高品質のためのものとなっていることが、フリーミアムの条件である。

えんとつ町のプペル』の無料公開は、まさにこのフリーミアムの条件を満たしているわけだ。Web上だけでも、絵とストーリーを始まりから終わりまで、すべて楽しめる。そのうえで、実際に触ってめくれるという付加価値を得たい人は課金する仕組みだからだ。

絵本市場では、フリーミアムしか勝ち目がない。

そして、西野氏が主張する通り、フリーミアムは絵本と相性が非常に良い、というか、これしかないのだ。

絵本とフリーミアム戦略は、とても相性が良いと僕は考えます。
というか、もはや、その方法でしか、この絵本業界に何十年も続いているループを抜け出せないと考えています。
「絵本とフリーミアムの相性」(「魔法のダイアリー」2017/2/1 13:06アクセス)

単に自分が楽しむためだけであれば、フラッと入った書店で手に取った小説や、フラッと入った映画館で観た映画がどれほど駄作であっても、「今回はハズレだったな」くらいの後悔で済ませられる。

だが、子育てにおける絵本は単なる娯楽ではない。子どもの知育に、情操教育に、人格形成に関わるものなのだ。だから、ハズレを引いている場合ではなく、だからこそ、長いこと売れていて、自分も読んで育った定番絵本が強いのだ。評価が安定しているし、書店でも図書館でも必ず置いてあるから中身を確かめられるし、新作絵本よりも価格が低めに抑えられているような定番絵本が有利に決まっている。

この点は、矢野経済研究所の報告書『ベビー関連市場マーケティング年鑑 2013年版』でも指摘されている。

また、絵本マーケットでは、母親同士の口コミのほか、図書館の紹介などが商品の売上を大きく左右する。絵本は日常的な育児用品とは異なり、子どもの心を豊かにする”情緒”面や、文字や言葉を覚える”学習”面での効果を期待して購入されるが、どの絵本を選べばいいのか判断できない消費者は、ロングセラーの定番絵本を選択するほか、口コミ情報に頼る人も多い。
p.278(強調は引用者)

口コミが売上を左右する、というのは当然わかる。どの商品・サービスだって同じことだ。

だが、ここで興味深いのは、「図書館の紹介」が売上を左右する点だ。図書館が紹介しているということは、当然その絵本を図書館で借りて無料で読むことができるということだ。だが、それが絵本の売上につながっているのだ。

もちろん、〈図書館で紹介されている絵本は予約がいっぱいで、すぐに読めないから仕方なく買う〉というパターンはあるだろう。だが、その「買う」という決断を後押ししているのは確実に、〈図書館という信頼できる機関が、その絵本の内容に太鼓判を押している〉という点だ。それほど、絵本には「評判」が重要なのだ。

だから、〈絵本の中身を無料で読める〉ということは、『えんとつ町のプペル』の事例を持ち出すまでもなく、〈絵本が売れなくなる〉という事態をもたらすわけではないのだ。それどころか、それによって良い評判が広がれば、そのほうが売れる可能性が上がる。

「無料で読まれたらお金を払ってもらえなくなるのでは?」などという不安は、むしろ売上を落とすことにつながる。

そうでなければ、そもそも『えんとつ町のプペル』以前に、絵本の全ページためし読みができる「絵本ナビ」だって成立しなかっただろう。

要するに、絵本の世界は古くからフリーミアム的な手法で成立していたのであり、そのなかでロングセラーの定番絵本に勝つには、西野氏のように、より意識的にフリーミアムという戦略を取っていく必要がある、ということだ。

絵本の無料公開はむずかしい

だが、「無料で絵本を公開する」というのは、そんなに簡単なことではない。

普通のブログサイトに画像と文章を並べても、なんかいまいち。

そんな悩みを解決できるのが、無料で絵本や紙芝居を公開できるficta.onlineです。ぜひ絵本をご覧になってみてください。そして、ご自分でも使ってみてください。

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